石松研究室
最新ニュース
2018.12.3
第3回International Graduate Course “Acid-Base and Ion Regulation in a Hypercapnic World”が12月3日~14日、カントー大学で実施されました。講師陣として、デンマークオーフス大学から2名、ブリティッシュコロンビア大学から3名、オスロ大学から2名、カリフォルニア大学アーバイン校から1名、カントー大学から2名、そして私でした。参加した大学院生は、カナダ7名、アメリカ2名、ノルウェー4名、スウェーデン3名、イギリス3名、ベトナム5名、ミャンマーと日本(私の学生の岡村君)から1名の計26名でした。学生は5つのグループに分かれて、1~2名の先生の指導のもとCO2に対する生理的応答についてのプロジェクト研究を行い、最終日には成果発表を行いました。私自身は、彼らにカニュレーション技法を教える役割で、最初の1週間はPangasianodon hypophthalmusの背大動脈、タウナギの脾臓脇の動脈、Chitala ornataの尾静脈のカニュレーションをひたすら教えていました。かなりハードな役割で、私も村田さんもくたくたでした。2週目には頼まれ仕事のチタラの血管鋳型標本づくり、 Osphronemus goramy の動脈と静脈のカニュレーション、オーフス大学の技官の人へのカニュレーション特訓などを一生懸命やりました。このコースは、今回も大変好評で、各国の大学院生は喜んでくれたと思います。岡村君にとってもよい経験になりました。
2018.11.24
文教キャンパス総合教育研究棟で長崎大学海洋未来イノベーション機構セミナー&シンポジウム「海と地球と人と」特別シンポジウム「海洋動物の環境適応」が開催されました。私の定年記念としての位置づけもあり、センター長の征矢野先生はじめ、センターのいろんな人たちには大変お世話になりました。
海外からは済州大学校のChoi Kwang-Sikさん、香港大学のRajanさん、タスマニアにあるオーストラリア南極局の川口創さんが、国内からは東京大学の金子豊二さん、京都大学の田川正朋さん、岡山大学の坂本竜哉さんなどの親しい友人たち、そして九州大学時代の恩師である板澤靖男先生、同じく九大時代の先輩で水産大学校を定年された山元憲一さん、鹿児島大学におられた小山次朗さん、京都大学で現職の山下洋さんなどなど、懐かしい方々も大勢参加してくれました。もちろん、研究室の卒業生も長崎、佐賀、熊本、新潟、兵庫などから駆けつけてくれました。また、ドイツ・ゲッチンゲン時代からの親友である桑平一郎さんもわざわざ時間を作って、参加してくれました。また、このシンポは石松が当時広島大学におられた難波雄二先生と始めた魚類生理学研究会の集まりも兼ねており、鹿児島大学や水産大学校をはじめとして、こちらの関係の方々も大勢いらしてくれました。
当日は快晴の天気で、とてもよい雰囲気のシンポだったと思います。参加者は、83名を数えたそうですが、名簿に名前を記入されなかった方もいて、実際はもっと多かったように思います。午前中は、第一部「環境変動と海洋動物」のタイトルで招待講演が2題、一般公演が5題あり、昼食の後には私が” Forty Years of Search in Comparative Anatomy and Physiology”と題してこれまでの研究と今後の抱負について1時間の講演を行いました。その後は、第2部「魚類の環境生理生態学」として招待講演が2題、一般公演が5題ありました。夕方から稲佐山頂上にある「ひかりのレストラン」で懇親会を行い、旧交を温めました。とても楽しい、生涯忘れられない一日でした。参加してくださった皆さんに心からお礼を申し上げたいと思います。
2019.3.31 定年退職しました!
平成31年3月31日をもって、33年間勤めた長崎大学を定年退職しました。1986(昭和61)年5月から1999(平成11)年3月までは、野母崎町にあった水産学部附属水産実験所、1999年4月から退職までは多以良町の環東シナ海環境資源研究センターに勤務しました。この間、多くの学生諸君と「赤潮プランクトンシャットネラによる魚類斃死機構」、「海洋酸性化の生物影響」、そして「マッドスキッパー類の生理生態」を主にした研究を行ってきました。月並みな感想ですが、振り返ると長かったようでもあり、あっと言う間の33年間だったような気もします。
今年の6月からは、ベトナムのカントー大学でJICAによる支援事業のアカデミックアドバイザーとして、プロジェクトが終了するまで勤務する予定です。このホームページをご覧になった方は既にお分かりと思いますが、カントー大学があるメコンデルタは空気呼吸魚がいっぱいで、大変魅力にあふれた場所です。支援事業の運営が主なアカデミックアドバイザーとしての職務ですが、せっかくメコンデルタに住むのですから研究にもできるだけ時間を割きたいと思っています。期待してください。
2018.10.6 魚類学会で発表
10月5日~8日に東京の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された日本魚類学会年会で「メコンデルタにおけるマッドスキッパーPeriophthalomodon septemradiatusの生態」を口頭発表しました。発表時には魚類学会の会員である天皇陛下が臨席なさって、私の講演と続く講演2題を聞かれました。数日前にこのことの連絡を受けて、大学院生のように発表の練習をして、本番に臨みました。発表に先立って、かなりの数の報道陣がカメラを構える中、直前に陛下が入場されました。個人による写真撮影は禁じられていたため、ここに載せる写真はありませんが、興味のある方は「天皇陛下 魚類学会」で検索してみてください。日テレNEWS24とTBS NEWSでは一瞬講演者(つまり私)が写ります(笑)。
2018.8.28 臨海実習
8月22日から26日に3年生の生物コースを対象とした臨海実験を行いました。これが私にとって最後の臨海実験になります。例年と同じように、ヒラメの尾静脈と口腔・鰓腔にカニュレーションを行い、エバンスブルーを用いた血液量、および鰓の酸素摂取効率の測定を行いました。実験マニュアルを添付しますので、興味のある方はご覧ください。ただし、細かな点は、なかなか文書では伝えきれないものです。直接私にメールで尋ねてくださっても結構です。カニュレーションのような古典的実験技法を行える人が少なくなっています。今年の12月にはベトナムで世界中から集まった大学院生を対象として、カニュレーション技法のトレーニングを行います。In vivoの生理学に興味をもつ若者がこれからも登場してくれることを祈っています
2018.6.22 フィールド調査
6月10日から19日にかけて(大学院生のHieu君とLoi君は22日まで)、メコン河の支流(と言ってもかなり大きな川ですが)のHau川でPeriophthalmodon septemradiatusの生態調査を行いました。最初の3日間は河口近くにある大きな島Cu Lao Dungのホテルに泊まり、汽水域での調査をし、その後はホテルをカントーに移して、上流のほうまで計4地点で生息密度や生息環境についての測定を行いました。いろいと新しいことが分かりましたが、第一にはこの魚はHau川のような大きな川には巣穴を持たず、Hau川に注ぎ込む幅数メートル程度の支流に高密度で巣穴を作っていることがはっきりしました。また、支流にある巣穴のいくつかからは受精卵が取れましたが、そのサイズと卵数は汽水域から分布の上流限界までほとんど変化がないことも分かりました。さらに、孵化仔魚は淡水から塩分17までは良好に成長することができるのですが、塩分34(つまり普通の海水)ではほとんど孵化できないことも分かりました。これらのことは、耳石のデータ(東大大気・海洋研の白井先生に測定してもらいました)や、DNAのデータ(長崎大水産学部の山田先生に分析してもらいました)とあわせると、かなり面白いことが言えそうです。定年まであと1年を切って、もう一発ネイチャーに!と夢を見ています。
今回の調査は、雨季の真っただ中でしたが、心配していたほどには雨は降りませんでした。ただ、どこに行っても蚊が多く、長そでを忘れた私やズボンが少し短かった村田さんはえらい目に会いました。ベトナムの人たち(Hieu君、Loi君も含めて)はなぜ蚊に食われないのでしょう?食われてもあまり痒そうでないのはなぜでしょうか?そう言えば、Hieu君は調査中にハチに刺されて川に飛び込んだことがありました。ハチは苦手みたいですね(笑)。
2018.4.11 第3回 International Graduate Course 開催のご案内
今年も2018年の12月3日~14日にカントー大学で博士課程の学生を対象としたトレーニングコースを行います。2014年から2年おきに開催しており今年で3回目です。前回は希望者多数でお断りするほどの人気でした。今年のタイトルは”Acid base and ion regulation in a hypercapnic world”、内容は、案内にあるように魚類における空気呼吸の進化、酸塩基平衡とイオン調節、呼吸生理、循環生理、血液などなど盛りだくさんです。加えて、様々な研究手法を紹介し、実際に体験して取得してもらいます。申込締切は2018年8月15日です。興味のある方はポスター最下段のMark Bayleyへ直接連絡してください。お尋ねがあれば石松まで。
2017.3.19 デンマーク・オーフス大でデンキウナギの血管標本作成
3月5日から10日にオーフス(Aarhus)大学で、デンキウナギの血管鋳型標本を作ってきました。オーフス大学は、私が1983年から84年にポスドクをしていたところで、昔なつかしい大学です。Department of BioscienceのTobias Wang教授は昔からの友人で、彼のお誘いで行ってきました。デンキウナギの血管系については、Carterが1935年に発表した論文の図がいまだにいろんな本に使われていて、これがどう考えても間違っているようなので、ずっと前からやりたいと思っていましたが、ようやく今回実現しました。
まず、最初に死んで冷凍されていた個体の解剖を行いましたが、通常、尻ビレの前にある肛門がどこにもなく、びっくりしました。肛門は心臓のすぐ脇にありました!次は、いよいよ本番です。デンキウナギは口の中が空気呼吸器官になっており、ヒダヒダで表面積が大きくなっています。麻酔をかけてから、触る時に電気ショックを受けるのでは、と最初ちょっと緊張しましたが、全然そんなことはありませんでした。6匹のデンキウナギの樹脂標本を作って、長崎に持って帰りました。現在、塩酸や水酸化ナトリウムで組織を溶かしています。どんなことが分かるか、とても楽しみです。また、ヘビの血管鋳型標本も作ってくれと言われ、2匹作ってきました。
コペンハーゲンからオーフスへ向かう途中では、海が凍っていて、大変きれいでした。
2017.11.27「水から出た魚たち」が韓国で出版されます!
2015年に海游舎から出版されたこの本が、韓国語に翻訳されて近々韓国で出版されます。翻訳してくれたのは、平成15年に私の研究室で学位を取った李京善さんです。李さんは現在、韓国の木浦海洋大学校で講師をしています。この本が出て、すぐに翻訳を申し出てくれて、今回の出版に辿り着きました。韓国語版のほかにも、中国の張潔さん(田北先生が指導教員となって、平成12年に学位をとり、現在は中国科学院動物研究所勤務)が中国語に翻訳して出版してくれることになっています。また、台湾の国立台南大学の黄銘志さんが台湾語に翻訳したいと言っておられます。英語版が出せるといいのですが、今のところ興味をもってくれる出版社はないようです。残念ですね。もし、英語版にできれば、その先にはベトナム語への翻訳もできるようになる気がするのですが。。。
2017.11.13.「第11回東シナ海の海洋・水産科学に関する国際ワークショップ」
平成29年11月10~12日、長崎大学文教キャンパスグローバル教育・学生支援棟で「第11回東シナ海の海洋・水産科学に関する国際ワークショップ」が開催されました。私がLocal Organizing Committeeのまとめ役で、ワークショップが始まるまでの1ヶ月はこれにほぼ全エネルギーを投入しました。このワークショップは、1997年に済州大学校(韓国)で開いて以来、長崎大学、上海水産大学(現在は上海海洋大学)、琉球大学がこの順番で2年に一回開いてきましたが、2011年に台湾海洋大学を加えて5大学のワークショップになりました。今回のワークショップでは新たに高雄海洋科技大(台湾)がメンバーになることが決まり、次回(2019年上海海洋大が担当)からは6大学ワークショップとなって再出発します。
とにかく、準備が大変で12日の終了時には完全にエネルギーを使い果たして、グロッギー状態でした。前回、2007年にやった時も大変でしたが、水産学部に当時いた石坂先生(現名古屋大学)や他の先生方と一生懸命やったことを思い出します。あの時は日本海洋学会から特集号を出しました。
懇親会には10月から新しく学長になられた河野先生も来てくれました。その前に河野先生はポスター会場に現われたのですが、2時間も続いたポスターセッションの終了間際にも関わらず、熱気に包まれた会場を見られて、大変関心しておられました。
これで、このワークショップについての私の役目は終わりました。やれやれ。
2017.10.15 ベトナムフィールド調査第3回
9月17日にベトナムからの留学生Hieu君とLoi君がまず、カントーへ旅立ちました。二人は家族をカントーに残して日本に来ているので、ベトナムのマッドスキッパー調査に行く時は大喜びです。このところ、興味をもって調べているPeriophthalmus septemradiatusの生態調査と、MoOでのマッドスキッパーサンプルの採取が主な目的です。彼らは、大変真面目な学生さんたちで、何時も一生懸命やってくれます。
彼らに続いて、私と村田さんが10月1日にカントーへ出発しましたが、その直前に驚くべきニュースがHieu君とLoi君から届きました。なんと、P. septemradiatusの体内から受精卵が見つかったというのです。彼らが送ってくれた写真を見ると、確かにこの仲間の受精卵のように楕円形をした卵が3つ写っています。1934年にドイツのHarmsという研究者がミナミトビハゼの体内から受精卵を見つけたと報告しており、しかも胚の絵まで残しています(興味のある方は「水から出た魚たち」131ページをご覧ください)。しかし、この発見は誰にも信用されずに80年が経ってしまいました。もし、Hieu君とLoi君の発見が本当なら、えらいことです。意気込んで、Hieu君、Loi君に合流して幻の体内受精卵を求めて、調査しましたが、今までのところ見つかっていません。でも、まだ諦めてはいません。同僚の専門家にサンプルを詳しく調べてもらうとともに、今後も幻の体内受精卵を求めて調査を続行します。
今回の調査では、P. septemradiatusの巣穴の中にも、トビハゼやP. schlosseriの巣穴のように産卵室があり、その天井に3000個から5000個の卵が産み付けられていること、産卵室の天井部分は酸素が豊富な環境(つまり空気がたまっていた)であった証拠などが得られました。もちろん、メタリックブルーのオスのきれいな写真もたくさん、Hieu君が撮ってくれました。
今回の調査地は車では入れない所だったため、移動手段はバイクでした。Hieu君Loi君がそれぞれ運転するバイクの後ろに調査道具を抱えて乗ります。これがなかなかの難易度でした。最終日には腰が痛くなってしまいました。。。
ほろほろ鳥を食べる
ベトナムではさんざんいろんな物を食べてきて、ほぼ食べつくした感がありましたが、とんでもない、やはりベトナムの食材は奥が深いものがあります。今回はほろほろ鳥を食べました。カントーの街からちょっと外れたところに連れて行かれて、ご馳走になりました。大変美味しいです。鶏肉や鳩肉、鴨肉よりも美味しいかもです。今回はあまり時間がなく、ちょっと慌しい食事でしたが、この次はじっくり味わって見たいと思います。
2017.7.20 ベトナムフィールド調査
マッドスキッパーは沿岸の泥干潟の生き物ですが、驚くことに沿岸から60キロも内陸のカントー市にPeriphthalmodon septemradiatusが棲んでいます。私達は、このマッドスキッパーがどのくらい上流にまで棲んでいるのか、上流域でも繁殖しているのか、沿岸にももちろんこの種はいますが、上流の個体群と沿岸の個体群の間で遺伝的交流があるのか、などを知るためにフィールド調査を行っています。
今回は2017年6月24日から7月7日に、メコン河の主な支流、ハウ河を沿岸からカンボジア国境付近まで調査しました。その結果、Periophthalmodon septemradiatusは沿岸から150キロ上流まで分布していること、この種のオスは目の覚めるようなコバルトブルーの婚姻色を示すこと、上流まで産卵用巣孔があること、沿岸で採集した卵はテストをした塩分0~16の全ての環境で孵化し、仔魚は生存できること、などが明らかになりました。またDNAサンプルを持ち帰り、水産学部の山田明徳先生に分析をお願いしました。結果が出るのが楽しみです。
Periophthalmodon septemradiatusが棲んでいる上流域の川岸には、ゴミがいっぱいで生活排水も流れ込んでいます。住民の方に尋ねると、この魚を数年前までは見たけど、もう見なくなったという答えが帰ってきたこともありました。メコン河流域は急速に開発が進んでおり、残念ながら環境の劣化がとても目につきます。このままにしておくと、淡水に棲むマッドスキッパーは絶滅する危険さえあります。
私達は、経団連自然保護基金の援助を受けて、メコン河河口のMoO干潟で環境保護活動を始めようとしていますが、上流域にも目を向ける必要があるようです。
2017.6.4 「ダーウィンが来た!」放送!!!
昨年の7月1カ月間撮影に協力した「ダーウィンが来た!」の放送があり、石松研全員で観賞しました。どんなふうに編集されているのかドキドキでしたが、さすがNHK!!大変分かりやすく、そしてトビハゼくんの魅力がたくさん詰まった30分でした。
孵化の撮影は失敗の連続で、30回以上挑戦して成功したのは2回だけ。あの満月の夜の孵化の瞬間の感動は一生忘れることはないでしょう。
渕上さん、篠原さん、そして撮影に協力してくれた学生諸君、本当にありがとうございました。
2017.5.13 研究室旅行
新年度がはじまり、石松研にも2名の4年生が加わりました。PEERAPORNさんも6カ月の香港留学から帰ってきたので、全員そろって研究室旅行に行ってきました。今年の行き先は呼子・宇宙科学館・祐徳稲荷神社。3月に卒業した野間くんも特別参加で大変楽しい研究室旅行になりました。
2017.3.24 卒業式
今年の石松研からは野間くんとNOPPARATさんが卒業しました。
野間くんは佐賀県へ、NOPPARATさんはタイの水産庁へ就職が決まり、新しい生活が始まります。
不器用だけど一生懸命でまっすぐな野間くん、いつも笑顔で面倒見が良いNOPPARATさん。今後のご活躍を楽しみにしています。
2016.12.10
2014年のInternational Graduate Course ”Physiology of Air-Breathing Fish in the Mekong Delta: Basic, Applied and Conservation”に続いて、今年は12月5日から16日まで、”Acid-Base and Ion Regulation in a Hypercapnic World”をベトナム・カントー大学で行いました。今年の教授陣は第1回目と同じく、デンマーク・オーフス大のTobias WangとMark Bayley、カナダ・ブリティシュコロンビア大のColin BraunerとBill Milsom、ノルウェー・オスロ大のGöran NilssonとSjannie Lefevre、そして私の7人でした。第1回に参加したアメリカ・カリフォルニア大アーバイン校のJim Hicksは残念ながら都合により不参加でした。大学院生の参加は今回は29人で、オーフス大(2人)、ブリティシュコロンビア大(5人)、カントー大(6人)はもちろんのこと、マクマスター大、アルバータ大、ビクトリア大、カリフォルニア大のデービス校とサンディエゴ校、タスマニア大、クィーンズランド大など世界各地から、またベトナムでもフエ大とニャチャン大からの参加もありました。今回は、最初から参加者を5つのグループに分けてプロジェクトをやってもらいました。残念ながら、私は12日にはノパラートさんの学位予備審査の関係で帰国しないといけませんでしたから、プロジェクトの結果がどうなったかわかりませんが、ほぼ全員とても熱心な学生さんばかりでした。
私が最初の1週間に担当したのは、カニュレーション技法のトレーニングでした。パンガシウス(Pangasianodon hypophthalmus)の背大動脈、チタラ(Chitala ornata)の尾静脈、タウナギ(Monopterus albus)の脾臓動脈のカニュレーション法を教えました。私も定年まであと2年ちょっとですが、このままではカニュレーションのテクニックの伝承ができません。本でも書こうかと思っているところです。
2016.12.4
2016年もカントー大学で集中講義を行いました(11月28日から12月3日)。今年は39年で全員ベトナムの学生さんでした。
中身は昨年と同じファイルをアップデートしたもので、さすがに4回目ともなると慣れたものです。しかし、しかし、今年は木曜の午後の講義中だったと思うのですが、急に足が痺れだしました。最初は大したことないと思っていましたが、なおらないので、一緒にカントーに行って淡水マッドスキッパーのフィールドワークをやっていたヒュー君が松葉杖を買ってきてくれました。おそらく、日本にはあまりないベトナム製の松葉杖です。
今年は、すぐ続いてInternational Graduate Courseもあったので、ややつらいものがありました。帰りはホーチミン空港で車椅子状態、いわゆる「搭乗にお手伝いが必要なお客様」状態でした。初めてわかりましたが、この状態だと最初に乗せてくれて、だけど降りるのは最後なのです。
2016.10.7
MoOでのマッドスキッパー調査活動が経団連自然保護協議会の視察を受けました。日本を代表する企業で環境保護活動に携わっている人達からなる、経団連自然保護協議会の22名がベトナム、ソクチャン省のMoO干潟を訪問しました。目的は、石松らがカントー大学、ソクチャン省と協力して進めているMoO干潟の生態系保全およびエコツーリズムゾーン設定を目指した活動を視察するためです。MoOの干潟には、Boleophthalmus boddarti, Oxuderces dentatus, Periophthalmodon schlosseri, Periophthalmus chrysospilos, Scartelaos histophorusと5種のマッドスキッパーが生息しており、世界の他の場所に見られないほど生物多様性が高い、貴重な場所です。
前日の6日には、Hieu君と石松はMoO干潟を準備のため訪れ、5種のマッドスキッパーを入れる水槽や説明のためのポスターの設置について、見学用桟橋にあるコーヒーショップの人達と打ち合わせを行ったり、すぐ近くに住む漁師さんにマッドスキッパーの採集のお願いをしたりしました。またソクチャン省の若い職員であるLuanさん(日本語も話せます)に7日朝早くにMoOに行って最終準備をお願いしました。
当日の7日午前中は心配した雨もなく、カントー市のホテルを朝7時に出発して、約2時間の旅の後、MoOに着きました。ソクチャン省からも10名近く、カントー大からも3名が説明のために参加してくれました。視察は1時間の予定でしたが、大変皆さん喜んでくれ、結局1時間半ほど干潟の視察を行いました。お試しにとカケオ(ベトナム南部で養殖されているマッドスキッパーの1種)を60匹ほど七輪で串焼きにして準備しておいたのですが、見事に完食してくれました。
この活動はまだ先が長いですが、JICAによるカントー大支援事業に位置付けてMoOの貴重な生態系の保全に向かって進んで行きたいと思います。
2016.9.26
9月26日から10月2日まで今年2回目のMoOでのマッドスキッパー調査、そして同じく2回目の淡水マッドスキッパー調査を行いました。今回は、新しい仲間として、帝京大学の浅野安信さんも調査に加わってくれました。浅野さんは、医学部で解剖を教えておられる先生ですが、なんとチョウザメを浅い水深の水槽で訓練して陸上行動ができるようになるか、を調べておられる、大変面白い先生です。「水から出た魚たち」が取り持つ縁で、お仲間になってくださいました。
今回もMoOでは5種のマッドスキッパーを確認することができ、行動の記録のみならず、形態研究用のサンプリングも行いました。MoO付近は3月に訪れた時と比べても、開発が進んでおり、やや心配になるほどです。
出張の後半では、カントー市から遠いほうのメコン河の主な支流であるTien Riverをカンボジア国境50kmというところまで遡りました。また、耳石や形態研究用にサンプリングも少数行いました。
10月2日に長崎に戻ったあと、石松は経団連自然保護協議会の視察対応のため10月3日にまたカントーへ向けて旅立ちました。。。
9月24日
岐阜大学で開催されていた日本魚類学会年会で、Mai Van Hieu君が「繁殖時における雌雄トビハゼの巣穴内滞在について」および野間昌平君が「ホコハゼ循環系の解剖」というタイトルで口頭発表を行いました。Hieu君の発表が16:30から野間君の発表が16:45からで、しかも会場が別の建物だったため、石松はHieu君の発表が終わり次第走って野間君の会場に向かうという慌しさでした。センターで繰り返し練習したせいで、二人の発表ともに分かりやすく大変好評でした。発表の後、3人でホテル近くの飲み屋に行き、日本酒を堪能しました。
25日夕刻には学会のエクスカーションがありましたが、野間君は最終面接が同日にあったため、またHieu君と石松は同日夜からベトナム野外調査に出かけたため、参加できませんでした(残念!)。
7月31日
7月1日からまる1ヶ月間、「ダーウィンが来た」の撮影に協力しました。1年前から担当のディレクターの方と相談をしてきましたが、4月にこの番組でトビハゼを取り上げることが正式に決まり、これまで準備をしてきました。
東京からのディレクターとカメラマン、石松研でマッドスキッパーの研究をやっている野間君とHieu君、そして私と村田さん、さらには水産学部や九大の学生さんにも手伝ってもらって、1ヶ月の合宿状態でした。1ヶ月の間、野間君とHieu君はほとんど佐賀にいっぱなし、村田さんも用事がある時だけ佐賀から長崎へ通うという状態、私も講義や試験をしに長崎へ帰っていました。私たちが主に担当したのは、10m以上ある内視鏡を使って、巣穴の中でトビハゼが卵を孵化させる行動の撮影です。内視鏡を設置したら、24時間体制で撮影機材が置いてあるテントに詰めていないといけないこともあり、約1か月の撮影が終わるころには全員体力の限界を感じていました。
内視鏡だけでなく、様々なトビハゼの生態の撮影に成功して、とても面白い番組になるのではないかと期待しています。放送日は2017年5月頃の予定です。ご期待ください。
2016年第2回ベトナム調査
6月3日から9日に、今年2回目のベトナム、マッドスキッパー調査を行いました。今回は潮の関係からMoOには行かず、昨年12月に発見したメコン川上流のマッドスキッパーの分布と基礎的な環境測定をすることとしました。メコン川は、メコンデルタでは大きく2本の川(Hậu River, Tiền River)に分かれて流れていますが、その両方の川をずっと遡って、カンボジア国境まであと70kmというあたりまでPeriophthalmodon septemradiatusの分布について調べてみました。
昨年12月の調査では、河口からの直線距離が100kmあたりの地点でPn. septemradiatusがいることを確認しましたが、今回はなんともっと上流、河口から約150kmの地点にいました。巣穴があることも確認しました。写真に写すと、この魚は目が青いです!エキゾチックな謎の魚です。雄雌が同じ巣穴にいることもありました。
河口から約120kmの地点では、圧力データロガーを水路に沈めて水深の変化を調べてみましたが、1日に2回、規則正しく上下していて、こんなに河口から離れていても潮汐の影響があるようでした。この日(6月6日)は新月の次の日でしたが、水深の変動は約2mでした。